「Computational Neurology研究会」第一回 開催のご案内(『行動変容生物学』共催)
「Computational Neurology研究会」第一回
テーマ: パーキンソン病の振動的神経活動と振戦に関する脳-身体シミュレーション
日時:2023年6月8日(木)15:00-16:30
開催場所:オンライン(zoom)
講演者:五十嵐潤(国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター)
https://boatneck-weeder-7b7.notion.site/Computational-Neurology-a945537f7cb54db3b20fa9c4e65c1e72
第一回は、スーパーコンピュータを使用し全脳シミュレーションを行っている理研の五十嵐先生です。特にパーキンソン病の振戦について、計算論的な立場からオンラインで発表していただきます。また、7月末にHarvard Medical Schoolでてんかん解析の専門家であるCatherine Chu先生にも京都に来ていただき、発表していただく予定です。Neurologyに関して数理モデルやAIからのアプローチに対して興味のある方であれば、学生を含めどなたでもご参加いただけます。奮ってご参加ください。
概要:パーキンソン病(PD)は、黒質緻密部の神経変性に伴うドーパミン減少が原因で起きる神経変性疾患である。PDでは、無動、固縮、振戦などの運動症状の発生が多く見られる。PD患者は世界で数百万人いるといわれ、人類的な課題となっている。PD状態では、大脳基底核、視床、大脳皮質で特徴的な振動的神経活動が発生し、振戦時には末梢の筋電位に振動的な信号が現れる。これらの振動的神経活動がドーパミンの減少と関連脳部位の相互作用によって発生するしくみはよくわかっていない。我々は、大脳基底核、視床、大脳皮質の神経回路モデルと身体モデルの連成シミュレーションを行い、振戦の発生する機構を調べた。その結果、ドーパミン減少で発生すると想定される結合強度や活動度の変化によって、大脳基底核では強いベータ振動が発生し、視床では振戦の周波数に近い、同期したカルシウムバースト発火が発生した。これらの結果から、ドーパミン減少が大脳基底核、視床で振動的神経活動を引き起こし、その振動的神経活動が大脳皮質・脊髄を伝わり末梢で振戦を起こすことが示唆される。最後に、PD状態と健常状態の振動現象を考察し、神経疾患と情報処理機能における振動的神経活動の役割について考察する。