文部科学省科学研究費 助成事業「学術変革領域研究(A)」行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学

行動変容生物学 - 行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学

領域概要・計画班

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人の行動変容の過程では、多次元な行動変容、目標とする行動変容だけでなく、動機付け、葛藤、成功の喜びなどの内的状態と関連していそうな顔面運動などの変容が現れることを、私たちは経験的に知っています。他人のそれを見て、その人の内的状態や、目標とする行動変容がこれから起こるのかなど“ある程度”推測できます。これはヒトに限らず多くの動物種にも共通するはずですが、マウスのような小動物で微細な行動変容を計測することは困難で、多くの研究で見逃されてきました。しかし、この数年のAI技術の飛躍的進展により、ビデオデータだけからマウスの目、ヒゲ、舌、顎の動きなどが高精度に抽出可能となってきました。

そこで本プロジェクトでは、多次元の行動変容と、行動変容を創発する脳のダイナミクス(脳動態;その時々の情報をコードする神経活動である脳情報動態に加え、その活動を規定するシナプス結合や分子発現の動態、メタ認知やメタ学習も含む)の関係性を“定量的”に解明していきます。関連回路のダイナミクスがどのような原理で作動することで行動変容が創発されるのか、この関係性は個体間、また健常個体と疾患個体の間でどのように異なるのか、関連回路の動態を直接的に操作、または行動介入により間接的に操作できれば、望ましい行動変容を促進できるのかを、大域情報フロー・細胞ロジックのレベルで解明していきます。

上記の目的のために、げっ歯類、サル、ヒトの多次元行動変容データと高品質な多次元脳動態データをできるだけ網羅的に計測し、取得データを標準化して解析する革新的手法によって、行動変容を創発する細胞機能構築と情報処理原理を明らかにしていきます。このことで、神経生物学(生理学、生化学、分子生物学、形態学、数理生物学などを含む)に新たな変革と転換をもたらし、動物行動学や行動科学と融合した行動変容生物学を創成します。そして、さらなる将来に向けた多元生体情報学と、脳参照アーキテクチャ(BRA)に基づくAIの礎を築いていきます。

この基礎的研究は、健常人や患者の健康行動変容のテーマである「望ましい行動変容を促進する」方法の、生物学的理解に基づいた開発につながると期待でき、さらに、行動変容データのオープン化と標準化によって、生物学、医学、物理学・情報科学の研究者や若手学生がアクセスできる革新的プラットフォームを構築し、次世代研究へ飛躍的に展開させていきます。

皆様のご協力とご支援をどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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