文部科学省科学研究費 助成事業「学術変革領域研究(A)」行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学

行動変容生物学 - 行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学

NEWS

公募研究の内容と公募要項説明会Q&Aを掲載しました

8月25日の公募要項説明会には、多くの方に参加していただき、誠に有難うございました。説明会でのQ&Aを下にまとめましたので、ご参考にしてください。また、科研費公募要領に記載されています、行動変容生物学の公募研究の内容も下に記載します。

Q&A

Q. 音声コミュニケーションは領域の行動計測対象に含まれるのか? 
A.はい、含まれます。「行動変容」は広く捉えていただいて結構です。

Q. 公募の対象として、行動変容の解明を目指す研究か、行動変容を起こすとどうなるかという応用指向の研究のどちらが公募としてより求められているか?
A. どちらがより求められているということはありません。

Q. A01とA02の違いは厳密か?全脳レベルと局所の計測に明確な基準はあるか?
A. 違いは厳密ではありません。【公募研究の内容】に記載されている内容に合致していれば、どちらでも構いません。

Q. データ共有は領域内だけか?それとも完全にオープンにされるのか?
A. 将来的に一部のデータを完全オープンにする可能性はありますが、基本的には領域内での共有を計画しています。サンプルデータは完全オープンになります。

Q. 動物中心の研究課題が多い様だが、人を対象とした測定研究は対象となるか?
A. はい、対象となります。

Q. 行動変容を捉えるための手法開発という萌芽的要素の強い提案も対象となるか?
A. はい、対象となります。手法開発は重要であると考えています。

Q. 行動、計測、操作など多岐にわたる領域研究となっているが、2年間の公募研究では、これらを統合した提案と、一部の要素に特化した提案のどちらがより望ましいのか? 
A. どちらがより望ましいということはありません。2年間の研究提案として適切な提案が望ましいと考えています。


公募研究の内容

① 領域の概要

人の行動変容の過程では、多次元な行動変容、目標とする行動変容だけでなく、動機づけ、葛藤、成功の喜びなどの内的状態と関連していそうな顔面運動などの変容がしばしば現れる。これはヒトに限らず多くの動物種にも共通するはずだが、マウスのような小動物で微細な行動変容を計測することは困難で、多くの研究で見逃されてきた。しかし、この数年のAI技術の飛躍的進展により、ビデオデータだけからマウスの目、ヒゲ、舌、顎などの顔面を含む全身の動きが高精度に抽出可能となってきた。そこで本研究領域では、多次元の行動変容と、行動変容を創発する脳のダイナミクス(脳動態;その時々の情報をコードする神経活動である脳情報動態に加え、その活動を規定するシナプス結合や分子発現の動態、メタ認知やメタ学習も含む)の関係性を“定量的”に解明する。関連回路のダイナミクスがどのような原理で作動することで行動変容が創発されるのか、この関係性は個体間、また健常個体と疾患個体の間でどのように異なるのか、関連回路の動態を直接的に操作、または行動介入により間接的に操作できれば、望ましい行動変容を促進できるのか、を大域情報フロー・細胞ロジックのレベルで解明する。

② 公募する内容、公募研究への期待等

公募研究では、研究項目A01とA02に該当する研究を募集する。実験が主たる研究では、多次元の行動変容データや多次元の脳動態データ、あるいはその両方の計測や操作を行う研究提案が望ましい。行動変容や脳動態を多次元高精度に計測・操作する技術やツールの開発に関する研究も歓迎する。対象動物は、哺乳類に限らず、多様な種での提案を歓迎する。必ずしも顔面運動を計測、解析する必要はなく、自由行動下での動きや姿勢といった行動をカメラを用いて検出する研究なども歓迎する。総括班では、多次元データの計測法や、標準化や解析法のオープン化を進める予定であり、これらの方法を積極的に用いて、得られた多次元データを解析しようとする研究が望ましい。理論や解析が主たる研究では、行動変容と脳動態の多次元データを用いた、データの低次元化のための解析法の開発や、行動変容と脳動態を結びつけるモデル構築やシミュレーションに関する研究を募集する。総括班ではマウスの行動変容データと脳動態データを取得して研究領域内で公開する予定であり、このデータの解析に基づく研究も歓迎する。多様な研究者の参画を求めており、特に、若手研究者の積極的な応募を期待する。

研究項目A01『行動変容の広域脳動態』では、行動変容を創発する全脳レベル(例えば、辺縁系・認知系・運動系ネットワーク)の活動を計測し、多次元行動変容と各回路内、回路間でのダイナミクスを関連付ける。社会性行動の変容を含む行動変容、行動変容を無意識に規定するメタ認知、発達や加齢に伴う行動変容、疾患モデルの脳動態を計測または操作する研究や、これらを関連付けるモデル、シミュレーション、ロボティクスに関する研究、行動介入によって行動変容や脳動態の関係性を明らかにしようとする研究を募集する。行動変容が生じる際の多次元行動変容データと多次元脳ダイナミクスに対する新たな解析手法の提案を歓迎する。多次元行動変容データや多次元脳動態データの解析に基づく行動介入法、認知行動療法やリハビリテーションの提案も歓迎する。また、マウスとサル、マウスとヒト、サルとヒトなどにおける、行動変容と脳動態の関連性の種間比較を行う研究も歓迎する。個体間での行動変容や脳動態を標準化する手法や種間共通性を抽出する手法の開発も歓迎する。

研究項目A02『広域脳動態と局所脳動態の相互作用』では、広域脳活動に限らず、単一細胞レベルや単一シナプスレベルでのダイナミクスを多次元行動変容と関連付け、局所回路内、領域間での情報の流れを厳密な細胞構築に基づき理解するとともに、行動変容を創発する脳回路のモデル化を行う。多次元行動変容と多次元脳計測データの次元圧縮、課題に共通する行動変容の抽出を行う。得られたデータの標準化とオープンデータ化を進め、行動変容データプラットフォームを構築する。脳動態は脳の活動電位による神経細胞活動だけではなく、遺伝子レベル、タンパク質レベルでの変化や、グリア細胞の動態、自律神経や末梢神経の動態、免疫・炎症と関連する脳動態の変化、脳腸相関、など幅広くとらえて、これらの多次元データを取得・解析する研究も募集する。研究領域内で多次元データを共有し標準化することで強い連携を行い、行動変容のメカニズムを明らかにしようとする、意欲的な研究を歓迎する。また上記のような課題に革新的視点で挑む新規方法論などの提案も歓迎する。

③ 公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数
研究項目番号 研究項目名 応募上限額(単年度当たり) 採択目安件数
A01 行動変容の広域脳動態 300 万円 10件
A02 広域脳動態と局所脳動態の相互作用 300 万円 10件

◂ NEWS一覧へ戻る

ページの先頭へ戻る